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アスリート外来 : 一流のアスリートは「筋肉」で戦っているのではない
アスリート外来
一流のアスリートは「筋肉」で戦っているのではない
アスリート外来を始めて感じることがあります。
それは、
一流のアスリートは筋肉で戦っているのではなく、「脳と神経」で戦っている
ということです。
時々、「野球(サッカー)しかやってこなかったので、脳は使っていません。筋肉バカです」と自嘲気味に話す選手がいます。
しかし私は、そのような方は一流のアスリートではなく、「スポーツをしている人」なのだと思っています。
本当にトップレベルで活躍している選手ほど、人一倍神経質で、人一倍こだわりが強く、人一倍臆病です。
試合前の準備、食事、睡眠、トレーニング、身体の感覚、戦術、相手選手の分析まで、驚くほど細かく考えています。
遺伝子的な傾向を見ても、そのような特徴を持つ選手は少なくありません。
例えば、ヒスタミン代謝が苦手なタイプでは、何事も徹底的に準備をする傾向があります。食事や睡眠、練習内容まで細かく管理し、不安要素を一つずつ消していきます。
また、グルタメート活性が高いタイプでは、一つの動作へのこだわりが非常に強くなります。フォームを何度も修正し、身体の使い方を考え続け、わずかな違和感にも気付きます。
外来で「ヒスタミンの多いトマトは少し控えてみましょう」とお話しすると、トマトだけでなく、トマトが触れていたレタスまで避ける選手もいます。
そこまでしなくても良いのでは、とこちらが思うこともあります。しかし、その徹底ぶりこそが一流アスリートの強さなのです。
競技においても、「ここまでやるのか」という準備を積み重ねるからこそ、大きな穴がありません。
私は以前から、
アスリートのほうが、一流のビジネスマン以上に神経を整える必要がある
と考えています。
ビジネスマンも最高の判断力が求められますが、アスリートはそれに加えて、脳で判断した情報を瞬時に末梢神経へ伝え、筋肉が正確に反応しなければ結果を残せません。
つまり、最高のパフォーマンスとは、
中枢神経と末梢神経が常に最高の状態で機能していること
なのです。
さらにビジネスマンは、大事な商談やプレゼンなど、短時間だけ神経機能を最大限発揮すれば成果を出せる場面があります。
しかしアスリートは違います。
毎日の練習、試合、シーズンを通して、中枢神経も末梢神経も高いレベルで維持し続けなければなりません。それができなければ結果が出ず、契約にも影響します。
だからこそ、アスリートという職業の賞味期限は、他の職業より短いのでしょう。
もちろん、長く第一線で活躍する経営者やビジネスマンも例外ではありません。優秀な方ほど運動や睡眠、身体のメンテナンスを欠かさず、神経機能を高いレベルで維持しています。
スクエアクリニックのアスリート外来では、筋肉だけを診ることはありません。
最高のパフォーマンスを発揮するためには、まず神経が最高の状態であることが重要だからです。そのため、神経機能を低下させる環境毒素の解毒をサポートし、ミトコンドリア機能を高めてエネルギー産生を最適化することを重視しています。
この考え方は、副腎疲労や発達障害の診療と共通する部分があります。神経、ミトコンドリア、腸内環境を整えることは、どの領域でも重要だからです。
しかし、アスリート医療には一つ大きな違いがあります。
それは、
競技人生には期限がある
ということです。
「来シーズンまでに結果を出したい」「オリンピックまであと2年」「ドラフトまでにコンディションを整えたい」。
このように明確な期限があるため、遠回りはできません。
そのため当院では、SNPs遺伝子検査も活用しながら、その選手が持つ神経伝達物質の特徴や解毒能力、炎症の起こしやすさなどを把握し、できる限り最短距離でコンディションを整えることを目指しています。
また、ジュニアアスリートを診療していて強く感じるのは、
子どもだけをサポートしても限界がある
ということです。
食事を準備するのも、睡眠環境を整えるのも、生活習慣を支えるのも、ご両親です。
そのため、アスリートを目指す子どもたちほど、ご両親のマインドセットが重要になります。
競技力だけを追い求めるのではなく、長く競技を続けられる身体をつくる。そのためには、家庭全体で健康に対する考え方を共有することが欠かせません。
もしアスリートを目指しているのであれば、筋力や技術だけに目を向けるのではなく、
神経機能、ミトコンドリア機能、そして腸内環境を見直してみてください。
本当のパフォーマンスは、筋肉だけではなく、身体全体が整って初めて発揮されるものだと私は考えています。