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遺伝子だけでは人生は決まらない 遺伝 × 環境 × 栄養 × 時間
スクエアクリニックでは長年SNPs遺伝子検査を行い、これまで1,000人以上の結果を見てきました。遺伝子を調べると、解毒の得意・不得意、炎症反応、神経伝達物質の代謝、ミトコンドリア機能など、その人が生まれながらに持っている特徴が少しずつ見えてきます。
しかし、多くの遺伝子検査を見れば見るほど、逆に強く感じるようになったことがあります。
「遺伝子だけでは、人間の健康は説明できない。」
遺伝子は、生物学的な設計図の一部です。同じ環境毒素に曝露しても影響を受けやすい人と受けにくい人がいます。同じストレスがかかっても平気な人もいれば、体調を崩す人もいます。神経伝達物質の代謝も、ミトコンドリアの働きも一人ひとり違います。だから遺伝子を知ることには大きな意味があります。
しかし、設計図があるだけでは家は建ちません。
私は人間の健康を考えるとき、**「遺伝 × 環境 × 栄養 × 時間」**という4つの要素を一緒に考えることが大切だと思っています。
まず「環境」です。ストレス、睡眠、運動、感染症、電磁波への曝露、重金属や農薬などの環境毒素、カビ毒・マイコトキシン、タバコ、薬物、そして社会環境や人間関係まで、私たちは毎日さまざまな環境の中で生活しています。
遺伝子そのものが変わらなくても、こうした環境によって遺伝子発現や身体の状態は変化します。例えば解毒能力に余裕のある人でも、長期間にわたり環境毒素への曝露が続けば、その処理能力を超える可能性があります。反対に、解毒に不利な遺伝的背景があっても、曝露を減らし、生活環境を整えることで身体への負担を減らすことはできます。
次に「栄養」です。ビタミン、ミネラル、脂質、炭水化物、タンパク質、水分、そして腸内細菌叢。これらは身体の代謝を支える基本的な材料です。一方で、アルコール、グルテン、カゼイン、過剰な糖質、食品添加物、加工食品、重金属やマイコトキシンなどが、その人にとって負担になる場合もあります。
ここでも大切なのは、全員に同じ食生活が正しいわけではないということです。遺伝的背景も違えば、腸内環境も違います。同じ食品を食べても、身体の反応が違うのは不思議なことではありません。
そして、私が非常に重要だと思っているのが4つ目の「時間」です。
20歳の身体と50歳の身体は違います。若い頃には問題にならなかった生活習慣も、10年、20年と積み重なることで身体に影響してくることがあります。加齢だけではありません。生活習慣の累積、感染からの経過時間、病気が発症するまでの潜伏期間、そして早期に介入したのか、長期間経過してから介入したのかによっても結果は変わります。
身体は静止画ではなく、動画なのです。
遺伝子検査は、その人の身体を理解するための大切な情報です。しかし、遺伝子検査だけを見て「あなたはこの病気になります」「この遺伝子があるからこの食事しかできません」と決めつけるのは、私は違うと思っています。
同じ遺伝子を持っていても、育った場所が違う。食べてきたものが違う。感染症の既往も違う。睡眠も運動量も違う。そして生きてきた時間も違います。
だから、同じ病名でも治療方法が同じになるとは限りません。
副腎疲労、慢性疲労、発達障害、Long COVIDなど、単一の原因では説明しにくい状態を診ていると、この考え方はとても重要になります。遺伝子だけを見るのでも、栄養だけを見るのでも、感染症だけを見るのでもなく、その人がどのような設計図を持ち、どのような環境で、何を食べ、どのくらいの時間を過ごしてきたのかを考える必要があります。
そして、この考え方には希望があります。
遺伝子は変えられなくても、環境と栄養は今日から変えることができます。
時間を戻すことはできませんが、これから先の時間の使い方は変えることができます。
私は1,000人以上のSNPs遺伝子検査を見てきたからこそ、遺伝子だけですべてを説明しようとは思わなくなりました。むしろ遺伝子を知ることで、環境や栄養、そして時間の重要性が、よりはっきり見えるようになりました。
遺伝子は運命ではありません。
自分の遺伝的背景を知り、今いる環境を見直し、自分に合った栄養を考え、年齢や人生の変化に合わせて生活を調整していく。
私はそれが、これからの個別化医療の基本になっていくと考えています。