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解毒を理解する 「デトックス=汗をかく」だけではありません
「デトックス」という言葉は、ずいぶん一般的になりました。サウナで汗をかく、ファスティングをする、サプリメントを飲む。どれも解毒を意識した行動として紹介されています。
しかし、私は解毒をもう少し広く考えています。大切なのは、「何の毒を、どこで処理して、どこから出すのか」を考えることです。
体内に入ってくるものは一種類ではありません。農薬、食品添加物、有機溶剤、重金属、マイコトキシンなど、現代人はさまざまな環境物質に曝露されています。そして毒素の種類が違えば、身体の中で処理される経路も違います。当然、解毒へのアプローチも同じではありません。
肝臓では一般にPhase I、Phase IIなど複数の代謝経路が働きます。Phase Iで代謝された物質を、Phase IIではグルタチオン抱合などによって、より排泄しやすい形へ変えていきます。ここではグルタチオン(GSH)やNACなどを考えることがあります。
そして最近、私が特に注目しているのがNRF2(Nrf2)です。
NRF2は、酸化ストレスに対する細胞防御や解毒関連遺伝子の発現を調節する重要な転写因子です。SODやGPXをはじめとする抗酸化システムとも関連し、身体が自分自身を守る仕組みを考えるうえで重要な存在です。
以前の解毒は「この毒には、このサプリメント」という発想が中心だったように思います。しかし科学が進歩するにつれて、人間が本来持っている防御システムをどう働かせるかという視点が重要になってきました。私はNRF2が、これからの解毒を考える上で大きなテーマになってくると思っています。
しかし、肝臓で処理できれば解毒終了ではありません。
最後に身体の外へ出さなければ意味がありません。
汗をかくことも大切です。水分を摂ることも大切です。食生活を整えることも大切です。しかし私が臨床で最も大切にしているのは、便通です。
肝臓で処理された物質の一部は胆汁を介して腸管へ排泄されます。ところが便秘が続けば、腸管に長時間とどまることになります。物質によっては腸肝循環によって再吸収される可能性もあります。
せっかく身体が一生懸命処理したものを、もう一度身体へ戻してしまってはもったいない。
だから私は、解毒治療を考える時に「まず便は毎日出ていますか?」と確認します。高価なサプリメントをたくさん飲む前に、まず便通を整える。とても地味ですが、私はここが解毒の基本だと思っています。
そして現代の解毒でもう一つ重要なのが、「足し算より引き算」です。
グルタチオンを足す。NACを足す。NRF2をサポートする。もちろん必要な場合があります。しかし毎日大量の加工食品を食べ、アルコールを飲み、環境毒素への曝露が続いている状態でサプリメントだけを追加しても、身体の仕事を増やしているだけかもしれません。
何を飲めばいいのかを考える前に、何を身体に入れないかを考える。
加工食品を減らす。不要な化学物質への曝露を減らす。食材を見直す。飲酒量を見直す。住環境のカビを確認する。そして便通、睡眠、運動を整える。
解毒とは、特別な治療ではありません。毎日の生活そのものです。
一方で、科学の進歩によって解毒の考え方も変わってきています。SNPs遺伝子検査によって、GST、PON1、NFE2L2(NRF2)、SOD2、GPXなど、解毒や抗酸化に関係する個人差も以前より考えやすくなりました。
同じ環境で生活していても、影響を受けやすい人と受けにくい人がいる。その違いを「気のせい」で終わらせず、遺伝的背景、生活環境、曝露している物質、排泄経路まで含めて考えることが、これからの解毒医療には必要だと思っています。
解毒とは、毒を出すことだけではありません。入れない、処理する、そして最後まで排泄する。
汗も大事。食事も大事。そして、まずは便通を大切にしてください。
現代人の健康を考えるとき、足し算ばかりでは身体が疲れてしまいます。
まず引く。そして身体が本来持っている解毒力を働かせる。
科学の進歩とともに、「デトックス」という言葉の意味も、そろそろアップデートする時期に来ているのではないでしょうか。