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メチレーションタイプとは 「なぜ同じ治療なのに、人によって効果が違うのか」
私がアメリカで副腎疲労を学び始めた20年以上前、治療はとてもシンプルでした。栄養を補給する。ホルモンを整える。睡眠を改善する。ストレスを減らす。それでも多くの患者さんが元気になりました。しかし診療を続けるうちに、一つの疑問が生まれました。
「同じ治療をしているのに、なぜ効果が全く違うのだろう。」
ある患者さんは数週間で元気になります。一方で、別の患者さんは同じサプリメントを飲んでもほとんど変化がありません。もっと量を増やせば良いのか。違うサプリメントを追加すれば良いのか。そんな試行錯誤を何年も続けました。
その答えの一つがメチレーションでした。
メチレーションという言葉は少し難しく聞こえますが、実際には身体のメンテナンスシステムです。DNAの修復、神経伝達物質の合成、ホルモン代謝、解毒、免疫の調節、細胞分裂など、生命活動のほとんどに関わっています。私は患者さんに「身体の工場で働く職人さんのような仕組みです」と説明しています。どれだけ良い材料を運んでも、職人さんが働かなければ工場は動きません。
スクエアクリニックでSNPs遺伝子検査を始めてから、この「職人さん」の個人差が見えるようになりました。
代表的なのがMTHFRです。MTHFRは葉酸を活性型葉酸へ変換する酵素で、この働きが弱いタイプでは葉酸を十分摂取していても体内でうまく利用できないことがあります。
さらにMTRとMTRRはビタミンB12を利用してメチレーションを維持する重要な遺伝子です。このタイプでは、ビタミンB12の必要量や種類が人によって異なります。
一方、BHMTはもう一つのメチレーション回路です。私はこの遺伝子を見るたびに、人間の身体には優れたバックアップシステムがあると感じます。高速道路が渋滞しても一般道があるように、メインの回路を別の経路が補ってくれることがあります。
近年、私が特に注目しているのがPEMTです。PEMTはホスファチジルコリンを合成し、細胞膜やミトコンドリア膜、胆汁の産生に関わる遺伝子です。肝臓や脳、ミトコンドリアの働きにも影響するため、「疲れやすい」という症状の背景に関係していることがあります。
またCBSはホモシステインをグルタチオン産生へ導く重要な酵素です。私は解毒医療を行う中で、メチレーションと解毒は別々ではなく、一つのシステムとして動いていることを日々実感しています。
もちろん、遺伝子だけですべてが決まるわけではありません。MTHFRに変異があっても非常に元気な方はたくさんいますし、逆に遺伝子に問題がなくても、睡眠不足、加工食品、アルコール、慢性感染、ストレスが続けばメチレーションはうまく回らなくなります。
だから私は患者さんにいつもお話しします。
「遺伝子よりも生活習慣の方が大切です。」
ただし、その生活習慣も全員同じではありません。葉酸を積極的に補った方が良い人、ビタミンB12が重要な人、コリンやベタイン(TMG)が役立つ人、リボフラビンが鍵になる人。それぞれ違います。その違いを教えてくれるのがSNPs遺伝子検査です。
私は1,000人以上の遺伝子検査を診てきました。その中で確信していることがあります。
「同じ人は、一人もいない。」
最近、多様性という言葉をよく耳にします。私は、多様性とは見た目や性格だけではないと思っています。葉酸の使い方も違う。ビタミンB12の必要量も違う。解毒力も違う。神経伝達物質の作り方も違う。だからこそ、同じ治療が全員に当てはまるわけではありません。
メチレーションタイプとは、「弱い体質」のことではありません。
自分だけの取扱説明書を知ること。
それが遠回りを減らし、自分らしく健康に生きるための第一歩だと私は考えています。これからの医療は、「病気を治す医療」から「その人を理解する医療」へ変わっていきます。そしてメチレーションは、その入り口となる最も重要な仕組みの一つなのです。