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ハイパフォーマンス外来で思うこと ― 「優秀さ」と「生きやすさ」は別である ―
ハイパフォーマンス外来を続けていると、社会的に「優秀」と評価される方々をサポートする機会が非常に多くあります。経営者、医師、投資家、研究者、トップ営業職など、仕事や学業で高い成果を出し、経済的にも成功している方々です。現代社会では、「稼げる人」が優秀と評価されやすく、そのような方は周囲からも立派な人として見られます。
しかし実際に診療していると、
「優秀であること」と「生きやすいこと」は全く別である
と強く感じます。
ハイパフォーマンス外来に来院される方々を遺伝子的背景から見ていくと、ある程度共通した傾向があります。
例えばDAOA系の方は、一つのことに異常なほど集中する力を持っています。いわゆる“オタク気質”です。興味を持った分野には寝食を忘れて没頭できるため、研究やビジネスの世界で突出した成果を出すことがあります。
COMT系の方は、ドーパミン活性が高く、頭の回転が非常に速い。情報処理能力が高く、論理的思考にも優れています。
ABP1系の方はヒスタミン優位で、記憶力や計算能力が高い傾向があります。集中力も強く、受験や資格試験などでは力を発揮しやすいタイプです。
これだけを見ると、「遺伝子変異があるほうが優秀なのではないか」と思われるかもしれません。しかし実際には、突出した能力の裏には必ず偏りや弱さも存在しています。
DAOAタイプは、興味のあることには驚異的な集中力を発揮しますが、興味のないことは本当にできません。会社経営はできるのに、電気代の支払いを忘れてしまうことがあります。
COMTタイプでは、ホルモン代謝がうまくいかず、長期的には疾患リスクにつながることがあります。
ABP1タイプでは、アトピー性皮膚炎や喘息、花粉症など、アレルギー症状に長年悩まされているケースも少なくありません。
つまり、
才能と脆さは、同じ場所に存在している
のです。
さらにDAOA系では、発達障害傾向や躁うつ病、統合失調症リスクなども高まることがあります。紙一重なのです。
そのため、重要なのは「平均的人間になること」ではなく、
自分の特性を理解し、自分に合った形で能力を維持すること
だと思っています。
無理に周囲に合わせようとすると、才能そのものが消えてしまうことがあります。一方で、自分の特性を理解せずに走り続ければ、身体や精神が先に壊れてしまいます。
ハイパフォーマンス外来では、神経伝達物質や解毒能力、ヒスタミン代謝、睡眠、栄養状態などを総合的に見ながら、「能力を消さずに、生きやすくする」ことを目標にしています。
また、発達障害児のご両親が非常に優秀で、社会的に活躍されているケースが多いのも、このような遺伝的背景が関係していると感じています。もちろん、遺伝子だけで全てが決まるわけではありません。環境、食事、ストレス、時間経過など、多くの要素が重なり合って人間は形成されています。
しかし近年感じるのは、
多様性の理解は、遺伝子から始まるのかもしれない
ということです。
人は皆、同じように世界を見ているわけではありません。
自分とは異なる脳機能の使い方をしている人が隣にいる。
自分とは異なる解毒力を持った人がいる。
音や光、匂い、食事、ストレスに対する感じ方が全く違う人がいる。
しかし、多くの場合、人は「自分の感覚が普通」だと思って生きています。
だからこそ、
「なぜそんなことで苦しむのか」
「なぜ普通にできないのか」
と他者を責めてしまうことがあります。
遺伝子検査を始めてから、私は「理解できない感覚が実際に存在する」ことを強く実感するようになりました。
電磁波に強く反応する方。
小麦で強いうつ症状が出る方。
薬剤に極端に過敏な方。
ヒスタミン過剰で常に緊張状態の方。
私自身には体感できないこともあります。しかし、遺伝子背景を見ることで、「その人にとっては現実である」と理解しやすくなりました。
本当の多様性とは、単に価値観の違いではなく、
「身体そのものが違う」
ということなのかもしれません。
優秀であることと、幸せであることは別です。
だからこそ、自分の特性を理解し、自分に合ったペースで長く走れることが、本当のハイパフォーマンスなのだと思っています。