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副腎疲労外来を行っていて思うこと 自分の能力を発揮できずに生きている人が、あまりにも多い
副腎疲労外来で患者さんを診察していて、最近強く感じることがあります。
本来持っている能力を、十分に発揮できていない人があまりにも多い。
私は、患者さんが疲れていることだけを問題にしているわけではありません。疲労や体調不良によって、その人が本来持っている能力や個性を発揮できず、人生の可能性まで狭められてしまっていることが、とても残念なのです。
例えば、腸内環境が悪く、便秘や腹部膨満感に悩まされている患者さんがいます。腸管と脳は腸脳相関と呼ばれる仕組みで密接につながっており、腸内環境の変化が気分やストレス応答に影響する可能性も研究されています。便秘で常にお腹が不快であれば、イライラしたり、集中力が低下したりするのも不思議ではありません。本来は穏やかで優しい人なのに、身体の不調によって家族や周囲の人に厳しく接してしまうこともあります。
また、環境毒素への曝露や酸化ストレス、慢性的な炎症などによって、ミトコンドリアの働きが低下している可能性を考える患者さんもいます。ミトコンドリアはATPを産生する重要な器官です。エネルギー産生がうまくいかなければ、仕事や勉強に集中することも難しくなります。頭ではやりたいことがたくさんあるのに、身体がついてこない。能力がないのではなく、能力を発揮するためのエネルギーが足りていないのかもしれません。ただし、疲労の原因は多様であり、毒素の蓄積やミトコンドリア障害だけで説明できるわけではありません。
食生活も重要です。糖質に偏った食事を続け、タンパク質や必要な栄養素が不足している患者さんもいます。血糖値が大きく変動すれば、眠気や集中力の低下につながることがあります。朝は菓子パン、昼は麺類、午後は甘い飲み物。これでは脳が十分に働けない人がいても不思議ではありません。私は、脳の能力を議論する前に、脳が正常に働ける材料と環境を与えているのかを考える必要があると思っています。
さらに、感覚過敏によって社会生活に苦労している患者さんもいます。音、光、匂い、人混み、他人との距離感など、周囲の人には何でもない刺激が、本人には耐え難い負担になることがあります。学校へ行けない、会社へ行けない、人とのコミュニケーションが難しい。その結果、引きこもりがちになってしまう人もいます。
しかし、社会に順応できないことと、能力が低いことはまったく別の問題です。
感覚過敏がある人の中には、非常に優れた観察力や集中力、独創的な発想を持っている人もいます。もちろん感覚過敏そのものが才能を意味するわけではありませんが、周囲の環境が合わないために、本来の能力を発揮できていない人は少なくないと感じています。
私は副腎疲労外来で、単に疲労を改善することだけを目標にしているわけではありません。腸内環境を整える。食生活を見直す。必要に応じて感染症や環境毒素への曝露を評価する。ミトコンドリアの働きを考える。感覚過敏がある人には、神経系の特性を理解し、生活環境を調整する。
こうしたアプローチを通じて、患者さんが本来持っている能力を少しでも発揮できるようになってほしいのです。
そして、SNPs遺伝子検査を1,000人以上診てきて、私自身についても思うことがあります。
私は、自分が特別に優秀な遺伝子を持っているとは思っていません。
神経伝達物質の代謝も、解毒能力も、ミトコンドリア機能も、すべてが優れているわけではありません。むしろ、自分の身体の弱い部分を理解しているからこそ、食生活、運動、睡眠、腸内環境、代謝機能を意識して整えるようにしています。
その結果、私よりも優れた能力や遺伝的素質を持っている人たちより、毎日を楽しく、元気に過ごせている部分があるのではないかと思うことがあります。
これは、私が優秀だからではありません。
自分の身体の取扱説明書を理解し、それに合わせて生活しているからです。
高性能なスポーツカーでも、燃料が悪く、エンジンの調子が悪く、メンテナンスもされていなければ、本来の性能は発揮できません。一方で、普通の車でも、適切な燃料を入れ、きちんと整備すれば、長く快適に走ることができます。
人間も同じではないでしょうか。
どれほど優れた遺伝的素質を持っていても、腸内環境が悪く、慢性的な疲労があり、睡眠不足で、食生活が乱れていれば、その能力を十分に発揮することは難しくなります。反対に、特別な才能がなくても、自分の身体の特徴を理解し、生活環境や代謝を整えることで、毎日のパフォーマンスを高めることはできると思います。
もちろん、遺伝子だけで人間の能力が決まるわけではありません。教育、経験、家庭環境、人間関係、努力、そして時間など、多くの要因が関係しています。また、すべての体調不良が生活改善だけで解決するわけでもありません。
それでも私は、生まれ持った能力を変えることより、今ある能力を十分に発揮できる身体をつくることの方が、現実的で大切な場合が多いと考えています。
副腎疲労外来を受診される患者さんの中には、何年も仕事ができなかった人、学校へ行けなかった人、家族との関係が悪くなってしまった人もいます。
そのような方が、少しずつ元気を取り戻し、仕事に復帰したり、学校へ通えるようになったり、家族と笑顔で過ごせるようになる。その姿を見ることが、私にとって何よりうれしいことです。
私は患者さんを、単に「疲れている人」として診ているわけではありません。
まだ発揮できていない可能性を持っている人として診ています。
人生は、優秀な遺伝子を持って生まれた人が勝つゲームではありません。自分の身体を理解し、自分に合った環境をつくり、持っている能力をどれだけ生かせるか。そして、その人生をどれだけ楽しめるかだと思います。
遺伝子は変えられなくても、身体の環境は変えられる。
副腎疲労外来で私が本当に取り戻してほしいのは、単なる体力ではありません。
その人が本来持っている能力と、人生を楽しむ力なのです。