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天才と副腎疲労 ― ハイパフォーマンス外来で見えてきたこと ―
スクエアクリニックではこれまで、慢性疲労や副腎疲労といった、客観的に評価しづらい疲労感に悩む方々を中心に診療を行ってきました。しかしここ10年ほどで、もう一つの特徴的な患者層が増えてきています。それは、すでに十分に元気でありながら、さらに高いパフォーマンスを求めて来院される方々です。
こうした方々は一見すると非常にエネルギッシュで、仕事もでき、行動力もあり、集中力も高いという特徴を持っています。しかしその内側では、思考が止まらず、休むことができず、疲れているにもかかわらず走り続けてしまうという、ある種のアンバランスさを抱えています。いわば「元気なのに苦しい」という状態です。この状態は従来の医療ではあまり言語化されてこなかった領域かもしれません。
臨床的に観察していくと、このような方々には神経伝達物質の偏りが見られることが多く、とくにグルタミン酸系に関わるDAOAの遺伝子多型を持つケースが一定数存在します。この特性を持つ方は興奮系が優位になりやすく、過集中状態に入りやすい一方で、リラックスが苦手で常に緊張した状態が続きやすい傾向があります。言い換えれば、常にアクセルが踏まれている状態です。
このような特性は、圧倒的な集中力や独自の発想力、周囲に流されない行動力として現れ、突出した成果を生み出す原動力となります。しかし同時に、周囲とのズレや社会的な摩擦、理解されにくさといった側面も伴います。時に「変わっている」と評されることもありますが、見方を変えれば、社会や世界に新しい価値をもたらす可能性を持った存在とも言えるでしょう。
一方で、このような神経特性を持つ方は、高い覚醒状態や長時間の集中を持続しやすいため、結果として回復が追いつかず、副腎疲労様の状態に陥りやすくなります。高い能力と引き換えに、身体の回復機能が追いつかなくなるという構図です。そのため、非常にパフォーマンスが高い時期と、急激にパフォーマンスが落ちる時期が交互に訪れるという「波」を持つことも少なくありません。
この波の背景には、神経伝達物質の偏りだけでなく、解毒能力、とくにグルタチオン系の消耗や睡眠の質の低下などが関与していると考えられます。したがって治療の目的は、この特性を抑え込むことではなく、適切に調整し、持続可能な形に整えることにあります。
ハイパフォーマンス外来では、従来の副腎疲労治療で中心となっていたホルモン補充やミトコンドリアサポートに加え、神経伝達物質のバランス調整を重視しています。グルタミン酸とGABAのバランス、カテコラミン系、ヒスタミン系などを統合的に捉え、その人にとって最適な状態を探っていきます。また同時に、解毒能力のサポートも極めて重要です。高いパフォーマンスを維持する方ほど神経活動の負荷が大きく、結果として酸化ストレスが増大し、グルタチオンが消耗しやすい傾向があるためです。
近年、「自分はADHDかもしれない」と感じる方が増えていますが、臨床的には神経伝達物質の偏りによって類似した状態が生じているケースも多く見られます。これらは適切に調整することで、むしろ強みとして発揮される特性へと変化していきます。
さらに現代の食生活も無視できません。加工食品やファストフードに多く含まれるグルタメートは神経の興奮を強めるため、もともとの特性を増幅させ、過剰な興奮状態を作り出す要因となります。そのため、食事の見直しも重要な介入の一つとなります。
ハイパフォーマンス外来で日々感じるのは、「天才」と呼ばれる人ほど実は繊細であるということです。強い集中力や行動力の裏には、崩れやすいバランスが存在しています。そのバランスを整えることができれば、才能はより安定し、より大きな価値を生み出す力へと変わります。
ご自身の特性を理解し、無理なく長く活躍する。そのためのサポートが、ハイパフォーマンス外来の役割だと考えています。
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スクエアクリニック
副院長
本間 龍介